大門実紀史の「やさしく強い経済学」のp57に「大企業(資本金10億円以上)の売上高、純利益、内部留保」というグラフが載っている。そのグラフによれば大企業の売上高は1980年度から90年度までは右肩上がりで増えていくが、その後は(そこそこの増減はあるが)概ね横這いで推移していく。しかし、純利益は2000年代に入ってから急激に増え始め、それに伴い内部留保も増えていく。
また、p59には「大企業の財務の動向(資本金10億円以上の企業)」というグラフも載っていて、それによれば大企業の現預金は2000年度に48.8兆円だったのに対して2020年度は85.1%増の90.4兆円と大幅に増えている。経常利益も19.4兆円→37.1兆円(91.1%増)に、配当金は3.5兆円→20.2兆円(483.4%増)に増え、内部留保(利益余剰金)にいたっては88.0兆円→242.1兆円(175.2%増)と莫大な額を積み増している。その一方で、人件費は51.8兆円→51.6兆円(0.4%減)に、設備投資は21.8兆円→20.7兆円(5.3%減)にそれぞれ減っている。
1980年から90年といえば1979年に「ジャパン・アズ・ナンバー・ワン」が発表されて日本経済が世界中を席巻した時代。その時代の日本企業は次々と高品質の新製品を発売し世界中の市場でシェアを増やしていった。そして、法人税の基本税率が一番高かったのもその時代だった(1984~1986年の43.3%)。
日本経済が停滞しているのは法人税が高いからでも、ましてや労働者が怠けているからでもない。日本経済が停滞している原因は政府を動かして自分たちが有利になるように「ルール」を変えることを学んだ経済人たちの「堕落」だろう。たしかに法人税を減税して、労働者を直接雇用から派遣に切り替えれば利益は最大化される。しかし、そんな方法で利益を生み出せることを知ってしまえばわざわざ商品開発をして魅力的な新製品を作って売り上げを増やす努力をしなくなるのは当然の事。
結局は「目先の利益」を捨て、将来に対する「投資」をしっかりと行うことでしか日本経済は復活しないのではないか?特に「人」に対する「投資」を蔑ろにするようになってから日本経済がダメになっていったように個人的には感じる。国も企業も「人」に金を使い、「人」を大切することが日本経済復活の第一歩だと思う。
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檸檬水 (dd_lemon@songbird.cloud)'s status on Tuesday, 31-Oct-2023 04:19:31 JST檸檬水