的場昭弘『未来のプルードン』読了。
“社会主義者、共産主義者でも大学出が多い中、プルードンが彼らと論争するのは、いかに大変なことであったか。上流階級からまっとうに取り扱ってもらえない孤独。若いうちに背負った借金の返済と、生きるための労働。その合い間をぬっての勉強。親の金や妻の金を使いながら読書と執筆に邁進するマルクスと比べると、まったく条件が違う。”
アンダードッグの思想家、プルードン。労働者の家庭に生まれ、働きながら独学で学びつづけた。つねに権力と闘い、権威主義・党派主義を警戒し、平等な共同所有の形態であるアソシアシオンを構想する。
マルクスとの確執、というかマルクスが一方的にプルードンを持ち上げたけど塩対応されて臍を曲げ、プルードンあいつ最悪!プルードンの言うこと全部批判してやる!となってしまった経緯などおもしろく読める。
「所有、それは盗みである!」の台詞が有名だが、それは何も所有しないという意味ではない。私的所有が公的に管理され、所有せざるものとの格差が恒久化される、そうしたあり方を批判している。フランス革命はブルジョワの革命であり、「自由、平等、友愛」の続きには「安全、所有」があった。所有がなければ自由・平等・友愛は手に入らない。
”自由の前提条件にあるものこそ私的所有であり、その私的所有を公的権力が保障することで私的所有は国家の権威の裏付けを得ることになる。”
国家の裏付けのない所有、権力から自由な所有をプルードンは目指す。人間は放っておくと権力のとりこになる。マルクス主義もそうだった。革命家は政治権力ではなく、それに代わる新しいものを目指すべきだという。たとえば「経済の均衡」だ。中央機関のない分散型の組織、今でいえばブロックチェーン技術を利用したDAO的なもので労働者自身が経営に関与する。国家にお金を管理させないという話も射程に入ってくる。
それが文字通りに実現可能かどうかはわからないが、自分の中の権力に惹かれる傾向を反省させられる読書だった。平等な社会を作るために誰かが権力を握ろうとする、その動きに注意しなくてはならない。権威の裏付けをもらって安心し、権威の裏付けのない言葉を軽視しそうになる自分の気持ちをこそ警戒しなくてはならない。
“権力の下で育てられた諸個人はたちまち、権力がかくあれと思うような存在となる”