新自由主義が信奉する「神の見えざる手」の正体とはなんでしょうか。
ノーベル経済学賞を受賞したアメリカの経済学者、ジョージ・A・アカロフとロバート・J・シラーは共著『不道徳な見えざる手』のなかで、一九八〇年代に人びとをギャンブル用スロットマシン中毒にし、大もうけしたビジネスマンたちを例にあげ、資本主義は自由にまかせていれば、神の見えざる手によって均衡するというようなものではない、野放図な自由市場とは、人の弱みにつけ込み、もうけを上げる「釣り師がカモを釣る競技場」である、と断罪しました。
市場経済は「神の見えざる手」ではなく、どん欲な釣り師の「不道徳な見えざる手」によって支配されているというのです。
釣り師がつられたカモに「釣られたのはおまえがバカだからだ」といい、釣られなかったカモは釣られたカモに「釣られたのはおまえがマヌケだからだ」という。みんなで釣られたカモの自己責任だけを問うことになれば、人の弱みにつけこんだ釣り師の悪徳は永遠に免罪されることになってしまいます。
-大門実紀史「カジノミクス」-