わたしは中国の作家莫言さん(『赤い高粱』など。ノーベル文学賞受賞)が一人っ子政策をテーマに新作を書いて日本で講演されたときに聞きに行ったのだが、
「物語は社会を直接変えることはできない。その社会問題の中で生きる個人の姿を描いて忘れられないものにするのが役目だ。川端康成が『伊豆の踊り子』を書いたように」
というお話を聞いて、そのときは本当にそうだなと感銘を受けた。でもあれからずいぶん経っているし、いつのまにか自分の中で〝自分クリシェ〟になって固まっていたかも…。考えや姿勢を変えていきたく思った。
しかし莫言さんは中国ではあまり小説を出せなくなってしまっている(国をはっきり批判するから)と数年前に聞いたような記憶もある…。