それから、現在、水産業に取材をした記事や番組で「前向きにがんばるしかない」といったトーンで、がんばりを前面に出したものも多く見られますが、そのときに留意していただきたいのは、現在テンションをあげて前向きを強調するのは、火事場の馬鹿力的な、危機において自分自身を防御するための自己防衛反応に近いものである、ということです。
東日本大震災の被災地で、被災直後に多く見られた現象と同じです。
がんばる被災者、奮闘する被災者、です。
ただ、復興のプロセスが経過していくに従って、多くの人たちはそのままならなさにもがき苦しむようになり、失望感が広がった、ということは忘れてはならない事実です。
疲弊した大きな原因には、行政の復興政策対応もありました。
処理水問題も長期にわたるため、政府がトップダウン的な縦割り行政でがんじがらめのやり方を変えるつもりがない以上、同様の経過をたどる可能性が非常に高いと思います。
今の自己防衛のためのテンションが高まった状態の人たちを「がんばる被災者」として打ち出すことにはメディアは慎重であるべきだと思います。