手もとの『明鏡』(第三版)、『精選版 日本国語大辞典』、「三省堂国語辞典』(第八版)、『大辞泉』(デジタル)は「ひとごと」の表記として「人事」を第一に、「他人事」を第二にあげています。「他人事」を「ひとごと」の表記の第一にあげているのは『新明解』(第八版)です。
『明鏡』によると、「他人事」は明治・大正期の文学で、「他人事」に「ひとごと」とふりがな付きで書かれたものが、のちふりがなが取られ「たにんごと」とも読むようになったとのこと。
一方、『新明解』は「ひとごと」を「人事」と書くのは比較的新しい表記だとしています。しかし、『精選版 日本国語大辞典』には「人ごと」という表記で紫式部日記を用例にあげていますので、表記の歴史的経緯については『明鏡』の方が正しいのではないかと思います。
なお、漢和辞典『漢辞海』『新字源』によれば、「人」に「他人」の意味もあるるので、「他人事」では冗長だということになります。
NHKが「ひと事」、日本新聞協会『新聞用語集』が「人ごと/ひとごと」としているのは「人事(じんじ)」などと区別するためでしょう。どちらにしてもローカルルール(ハウスルール)なので、他の人がどう書くべきか縛るものではないだろうなと、私は「ひとごと」のように思っています。
Embed Notice
HTML Code
Corresponding Notice
- Embed this notice
窮狸校正所(森卓司) (kyuli@bookwor.ms)'s status on Thursday, 10-Aug-2023 13:24:27 JST窮狸校正所(森卓司)