ある作家が荒野で絵の練習をしていた。デッサンに悩んでいると悪魔が現れ、
「そんなに画力がほしいなら、この石に、私の画力を上げろと命じてごらんなさい」と言った。
作家は「絵は画力だけで描くものではない。どれだけ癖(ヘキ)をこめられるかだ」と言って悪魔を退けた。
それから、悪魔は作家を高い所へ連れて行き、眼下に多くの人々を見せて言った、「私にひざまずくなら、これらの人間をみんな、あなたのフォロワーにしてあげましょう」絵師は「フォロワーの多寡は良い仕事とは関係ない」と言って悪魔を退けた。
最後に悪魔は作家を有明に連れて行き、ビッグサイトの逆三角の頂上に立たせて言った、「もしあなたが神絵師であるなら、ここから下へ飛びおりてごらんなさい。あなたのフォロワーたちが、あなたを受け止めるでしょう。」
作家は答えて言った、「フォロワーはファンであるとは限らず、むしろ私という珍獣を観察し、銃口を突きつけ監視していると思った方が正しい」。悪魔はあらゆる試みをしつくして、作家を離れた。