フルオレセイン (fluorescein) は顕微鏡観察に用いられる蛍光色素の一種である。他にも色素レーザーの媒体、法医学や血清学における血痕の探索、色素追跡用途などに広く利用されている。
概要
フルオレセインは1871年、アドルフ・フォン・バイヤーにより発見された。フルオレセインの吸収極大は波長 494nm(青色光)、放出する蛍光の極大は 521nm(緑色光、水中)であり、励起にはアルゴンレーザーなどが利用できる。また等吸収点(全てのpHで等しい吸収を示す点)を 460nm に持つ。フルオレセインには「レソルシノールフタレイン」など多くの別名や慣用名がある。着色料としては「D&Cイエロー7」および「D&Cイエロー8」(二ナトリウム塩)の名で知られている。
化学的・物理的特性
フルオレセインの電離平衡における pKa は 6.4 である。従ってフルオレセインは pH 5 〜 9 の範囲で pH 依存性の吸収と蛍光放出を示す。また、プロトン化/脱プロトン化されたフルオレセインの蛍光寿命はおよそ 3 〜 4 ns であり、これを利用して pH を測定することもできる。この寿命は時間相関単一光子計数法 (time-correlated single photon counting; TCSPC) や蛍光寿命測定装置によって知ることができる。
誘導体
フルオレセインには、フルオレセインイソチオシアネート (fluorescein isothiocyanate; FITC) に代表される多くの誘導体が存在する。FITCはフルオレセインの水素原子の一つをイソチオシアネート基で置換した化合物(右図参照)であり、この部位でチオ尿素結合を形成し、細胞内タンパク質の第一級アミンと結合する。また、フルオレセイン骨格にスクシンイミジルエステルを付加した…