現政権が悲惨な法案を通過させる現在、李琴峰氏の『彼岸島が咲く花』は凄い小説だったなという思いが強くなってゆく。
あの小説の世界はほぼ虚構だが、作中にでてくる「ひのもとのくに」というあからさまに現日本をカリカライズした国が出てくる。そこでの言葉が読みやすいひらがなと、横文字言葉でだけ構成され言語として完全に崩壊してしまっている。
つまり、ひのもとのくにが社会として崩壊してしまっているのを示しているわけで、小説が進むとどんな理由で崩壊が始まったかも描写される。
いま振り返ると、李氏が台湾人であり、そして同性愛者として日本社会に暮らしてたら、もうここまで言葉が通じずに崩壊しているのかというのが端的に描かれているとも言えて、あの小説はいま読むと切実な気持ちになるというか……