『隷属なき道』 by ルトガー・ブレグマン 読了。
英語タイトルは『現実主義者のためのユートピア』。その名の通り、ファクトや数字に基づく説得力あるユートピア論を繰り広げる。後期資本主義社会を生きるわれわれにとってのユートピアとは、たとえば誰にでも平等に配られるベーシックインカムであり、ハウジングファーストの貧困対策であり、週15時間労働であり、GDPからダッシュボードへの移行であり、AIと競争しない道であり、国境の開放であり、優秀な人間が金融やコンサルではなく研究者をめざす社会である。
ユートピアが往々にしてディストピアでありながら、それでも必要不可欠であるのはなぜか。「ユートピアは簡単な答えをもたらさない。もちろん解決策もだ。だが、それは正しい問いを投げかける」
オヴァートンの窓、つまり政治的に容認できる主張の範囲を広げるためには、誰かがもっと急進的なアイデアを公表して、窓の範囲を広げればいい。すごく急進的な主張があれば、そこまででもない急進的な主張は普通に受け入れられる。「負け犬の社会主義者」にならないためには、もっといいやり方を語る度胸が必要だ。進歩を語る言語を取り戻すのだ。
「思い出そう、かつて、奴隷制度の廃止、 女性の選挙権、同性婚の容認を求めた人々が狂人とみなされたことを。だがそれは、彼らが正しかったことを歴史が証明するまでの話だった」
思考を刺激する良書。日本語タイトルとサブタイトルは意味不明なのですが、ビジネス書は「AIに勝つ」くらい言わないと営業さんに売ってもらえないのかな…。