国際人権の専門家で英エセックス大研究員の藤田早苗さんは、国連人権機関に日本国内の状況を情報提供しながら会議や審査の傍聴を続ける。昨年12月には「武器としての国際人権―日本の貧困・報道・差別」を出版。日本は女性差別撤廃条約や子どもの権利条約など八つの条約に批准しながら、国際基準に照らすと人権が守られていないという。ジェンダー・ステレオタイプ(性別に関する固定観念)が根強いなど、男女平等も遅れていると指摘。1月に徳島市で開かれた講演の内容を紹介する。【人権の概念が浸透していない日本】 人間らしく生きるためには何が必要か。移動の自由、情報を得る権利、差別されない、拷問されない権利―。これらは全て、国際人権条約に具体的に書かれている。しかしながら人権について、日本ではあまり知られていないと感じる。 国連の説明では▽人がすることを尊重し、不当に制限しない(尊重義務)▽虐待など第三者による人権侵害から人を守る(保護義務)▽人が能力を発揮できる条件を整える(充足義務)―の三つの義務を、政府が果たす必要があるとしている。ところが日本での人権教育は、道徳教育と同一視されている。主に「優しさ」や「思いやり」の心を育てることを目的としており、政府の義務が抜け落ちてしまっている。 「子どもの貧困 あなたにできる支援があります」と…