「中国は夫婦別姓」というと、「それは妻は家に入れないという儒教的価値観から来ていて、別に男女平等だからではない」という答えになりがちなんだけど、この本を読んでいてそうではないことを知った(第6章)。
斎藤淳子さんの紹介によれば、1950年、革命直後に成立した「婚姻法」によって婚姻の自由の一部として「夫婦は自らの姓名を各自が使用する権利を持つ」と定められたのが現在の夫婦別姓の根拠だという(p.201)。
でも、それ以前は伝統的な夫婦別姓だったんでしょ、要は理屈をつけただけじゃん…と思いがちなのだがそうではない。それ以前には「冠姓」というものがあった。これは妻が生来の姓の前に夫の姓をつけるもので、中華民国の法律はそのようになっていた。「このルールに倣って、蒋介石の妻の宋美齢も台湾では『蒋宋美齢』と呼ばれたのは有名だ。…香港特別行政区行政長官のキャリー・ラム氏の中国名は林鄭月娥だが、これも生来の鄭月娥という名前の前に夫の『林』姓を冠した冠姓だ」(p.217)ということだ。それを廃止した結果が中華人民共和国の夫婦別姓なのだった。
とはいえ、子どもの名前に関しては夫の姓をつけるのが当たり前で、父母どちらの姓でもよくなったのは1980年の婚姻法改正以来らしい(それでも日本よりむちゃくちゃ進んでいるが)。一人っ子政策が盛んだったころは、姓を夫のものにして、名に「妻の姓+子供の個人名」をつける、というやり方も多かったとのこと。最近はどうなったのかな、と思うけど、とりあえず勉強になった。