『サイボーグになる』by キム・チョヨプ/キム・ウォニョン 読了
『アーモンド』という韓国のベストセラー小説がある。扁桃体が小さく感情に乏しい少年を描いたYAで、日本でも大絶賛された。でも僕はあの作品のラストが嫌だった。「感動した」という感想を読むのがつらかった。それは感じ方が多数派と異なる人間を怪物として描き、「笑顔で感情を表すことこそが正常である」「みんなと同じになるのが幸せだ」という規範をどこまでも無邪気に肯定するものに見えたからだ。
本書はサイボーグ障害者という概念を軸に、障害者の正義と人間であることの意味、科学技術と社会のあり方を考察する。僕も体内の金属棒からノイキャンまで様々な技術に助けられているサイボーグであり、障害者の正義に興味があるので手に取った。ときに強く頷き、勇気づけられ、ときに疑いや不安や嫌悪に駆られ、認識のあちこちにグリッチが挿入されるような読書だった。そのざらりとした手触りとともに、障害者は社会に知をもたらす。誰かにはスムーズな社会が誰かには障害だらけであることを示す。世界が複数あることを、簡単な答えなどないことを示し続ける。