この話は、いろいろな論点を含んでいるとは思う。そもそも新聞は「いろいろな人を代弁する」ことを仕事としてやってきた。話を聞かせてもらい、それをもとに記事を書く。相手が専門家の場合、専門家の難しい話を「偉大なる素人」としてかみ砕き、それを分かりやすく一般読者に伝えるという想定があった。
しかしネットが普及して、その想定が揺らぐようになった。まず、専門家のなかに自ら積極的に情報発信する人がでてきた。そうなると仲介者としての記者の存在がむしろ目障りにもなる。不正確な要約や切り取りをされるぐらいなら、自分で発信したほうがよほどマシだということ。
不適切な要約に対する不満は昔からあっただろうけれども、それがより顕在化しやすい状況になっている。
構造的には、テロリストがネットで自ら情報発信するようになったことで、ジャーナリストを大事に扱う必要がなくなり、人質にしたり殺害したりするようになったのと同じと言えるかもしれない。