知床遊覧船沈没事故(しれとこゆうらんせんちんぼつじこ)は、2022年(令和4年)4月23日に北海道斜里郡斜里町で発生した海難事故。
観光船「KAZU I」(カズ ワン)が斜里町の知床半島西海岸沖で消息を絶ち、船内浸水後に沈没した。乗員・乗客合わせて26名全員が死亡・行方不明となり、旅客船事業に対する国の監督強化や、海上保安庁による救難体制強化のきっかけとなった。
「知床観光船沈没事故」「北海道知床遊覧船事故」「KAZU I 沈没事故」などとも呼称されているが、「知床観光船」を登録商標としている道東観光開発、並びに同社が運行する「知床観光船おーろら」と本件事故は一切無関係である。
事故の経過
観光船「KAZU I」は、有限会社知床遊覧船(しれとこゆうらんせん)が所有・運行する小型観光船で、斜里町ウトロのウトロ漁港から知床岬へ向かい、折り返してウトロへ帰港する予定だった。このコースは「知床岬コース」と呼ばれており、所要時間は3時間程度だった。
事故当日は有限会社知床遊覧船が当季の運航を始めた初日だった。ウトロ漁港を発着する観光船は同社を含め5社が運航していたが、同業他社はゴールデンウィーク初日の4月29日ごろから運航を開始する予定だったため、当日は同社の観光船だけが運航していた。
当日の気象状況
事故当日、斜里町には3時9分に強風注意報(海上で6時から24時まで風速15.0 m/s以上)、9時42分に波浪注意報(海上で9時から12時まで波高2.0 m、12時から15時まで波高2.5 m)が発表されていた。発航以前の時点で運航基準に基づく発航を中止すべき条件(風速8m/s以上、波高1m以上)に達するおそれがあった。
ウトロ漁港沖合の波高は10時には32 cmと穏やかだったが、11時40分頃から上昇を始め、12時20分に1 mを超え、13時18分には2 mとなり、14時には3.07 mに達した。
事故当日の朝、「KAZU I」の船長は別の観光船運行会社の従業員から「今日は海に出るのをやめておいた方がいい」と忠告されていたという。ウトロ漁業協同組合によると、昼頃からは現場海域の視界が悪くなって波も高まり…