『あるくこと』
あるく とは なにか
蛇のからむ ほうが右という
毒だらけ だからだ
だから 右足がある のだ
そして蛇のない 方向から生える
菌類のことを 左 という
左の傘からもれる 胞子こそ 左足だ
右足には しょっぱい駅を分秘する交通公社が
軒を ならべているぞ
池袋とか新宿とかいうべとべとした死体があり
わが小屋を めざして 盲信してゆくはず
ひと は あるく とき
まず右足の からくりを運動させる
信濃町 という筋肉が ある
千駄ヶ谷よりも 心臓に近いエレベータ だ
そこから トイレへ走るべきでない
つねに揺れる血管が じゃまをしているから
ちまちました売りものより 邪魔な 蝶が
男から女へ すべって ゆくから
そのホームから とびおりては いけない
すきまこそ関節を あらわしているからだ
わが運転手の棺桶を つんだあひるが
すきまへとびこめば
右足 は 曲がる