この後、原案は日本政府との折衝で原案の理念の部分が削除され、また国会の審議で若干修正されて現行の24条になったが、その間「国家が家族を保護する意義」を盛り込もうという考えが出された形跡はない。それは、憲法の制定者たちが国家による家族への介入に相当の警戒感を持っていたからではないか。
そもそも、ワイマール憲法ならなんでもいいわけではない。家族に関する部分は相当保守的、国家主義的だし、話は違うが、後にヒトラーの独裁を生むことになった緊急事態条項はワイマール憲法の大特徴のひとつだ。ワイマール憲法が素晴らしいと思う人が「日本国憲法にも緊急事態条項を盛り込むべきだ」と主張するかというとほとんどの場合はそうでないわけで、ワイマール憲法がこうだから日本国憲法もそのように解釈すべきだ、ということにはならない。
憲法24条については、素直に「社会通念として結婚や家族が存在するので、政府はそれらの実現に必要な措置を、人の基本的な権利に沿う形で実施すべし」という命令として読むべきだと思う。