原稿で少し関連する話をしたから改めて思うのですが、シスジェンダーで、かつトランスジェンダーのことをよく知らないひとはよく「普通に暮らしてきた男性が女性になりたがるようになる」みたいなフレームで語る気がするけど、少なくとも私の実感では「男性になりたくて子どものころからずっとがんばって、周りが『男じゃないかも』なんて疑念をまったく持たないよう疑わしく思われそうなものは排除したりして努力して暮らしていたけれど、それがやがて破綻して『がんばっても私は男にはなれないのだ』と諦めて、仕方なく男性でない自分を受け入れるようになった」みたいなほうが正確なんですよね。
もちろんそれとともに、自分が受け入れた自分の通りに生きるために周囲の認識を変えるべく工夫する、というのもあるのだけど、私の場合は取り立てて「女性になりたい」という願望を持っていたことはない気がします。まず男性でない事実を仕方なく受け入れて、そのあと別に女性でなくてもよかったのだけど周囲が勝手に女性に分類し出して、私の場合はそれが男性に分類される場合のような困難を別に生じさせなかったから「まあ、それでいいか」と受け入れた、という流れだと認識しています。