版画家の友人と「お互い、画業と文筆業と差があるとはいえ、制作に行き詰まったときはどうしている?」という会話になった。
その時の解決方法は、「まずは手が動いている状態をキープしておくことが重要ではないか。何かをやっていればやる気がでるみたいなもので……」ということに落ち着いた。
版画家の友人は銅板にニードルを入れる脇でらくがきを、僕はGoogleドキュメントの原稿が行き詰まったら空いたスペースに突然日記を書き始めるのである。今後、クライアントが難しい論考の初稿を受け取ったとき、消し忘れた「もらいもののカルパッチョソースをどうするのか」の日記が書かれていた時、それは僕が初稿を書ききるためやる気を出すために手を動かした日記を消し忘れたということである。