@maria では今日は圏の双対性に関してのちょっとした注意点について話していきたいと思います。簡単に言えば圏の双対とは「射の向きを逆にする操作、あるいは射の向きを逆にした概念」だと思えばいいです。すなわち、射f:A→Bに対してその双対とはf^op:B→Aということですね。もう少し具体的なものを上げるなら、余積は積の双対、CokはKerの双対、pushoutは pullbackの双対、などでしょうか。証明等で「双対的な議論を行えば同様に示せる」という文言をよく使うのですが、これには一つ注意があり、「議論の中で出てきた概念の双対がその圏の中に存在するか?」や「真に双対か?」ということに注意する必要があります。例えば標数pの拡大体の圏は始対象を持つが終対象を持ちませんし、pullbackの持ち上げはモノ射を保つが、その双対は「pushoutの持ち上げはエピ射を保つ」だったりします(そしてpullbackの持ち上げがエピ射を保つことはそんなに自明ではない)。そういうわけで、標語的に使うのではなくちゃんと注意深く観察した上で言葉を使いましょうねという話でした。