一番感情移入したのは「五色革命」のプローイだ。
バンコクで突如起きたクーデターに巻き込まれた文椎が、プローイに強制的に協力させられたあとで、彼女の発する問いに
“豊かさと自由に関係がないから、こんなに難しいんじゃないか”
と文椎が胸中で答えるシーンがある。
プローイの国に言論の自由はない。ニュースは検閲され、自由に集まり話し合うことはできない。
文椎はそんな状況は想像ができないと言ったけれど、私はプローイのことを理解できる気がする。
「言論の自由がない」=「口を塞がれている」ということだ。
私も日々の中で口を塞がれていると思うことがある。いや、喋ると罵られ黙らされる恐怖があることを知っている、というのが正しいかもしれない。
二人が持っていて私が持っていない自由もある。
私が持っていて二人が持っていない自由もあると思う。
文椎は、この先も新しい世界を開いていくのだろう。
猫のジローを連れて。