今日の日曜美術館で紹介された永青文庫所蔵の《雪華文蒔絵印籠》は、「雪の殿さま」こと古河藩藩主土井利位による『雪華図説』正・続所載の雪華文をモチーフにしたものだ。
『雪華図説』に記された雪の結晶の観察方法は、雪の降りそうな寒い夜、あらかじめ黒い布を屋外にさらして冷やしておき、舞い落ちる雪を布で受けたら、ピンセットで漆器の箱に入れ蘭鏡(顕微鏡)で観察する、というもの。
永青文庫所蔵の印籠に施された雪華文は、蓋から底まで、羊遊斎の創作したものまで含めると76点。羊遊斎による同手の作(静嘉堂文庫所蔵)の雪華文は23点だから3倍近い数になる。実は利位は熊本藩12代藩主・斎護の叔父にあたり、古河藩の財政が悪化した際、細川家から莫大な借り入れをしていた。利位はその返礼の意味も込め、自身の研究の精華を反映した印籠を進物として贈ったらしい。斎護へ贈った印籠にあえて「大雪」を降らせたのは、南国九州を本拠とする細川家への心配りだったのかもしれない。
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橋本麻里 (hashimoto_tokyo@mstdn.jp)'s status on Saturday, 26-Nov-2022 10:55:38 JST 橋本麻里