ナチス・ドイツの重鎮であったヘルマン・ゲーリングは戦後の裁判のさなか、刑務所に収容されている際、訪ねてきたアメリカ人心理学者グスタフ・ギルバートとの対話の中で次のように語ったと伝えられている。
(G.M.Gilbert『Nuremberg Diary』p.278-279 より引用。翻訳は引用者による。)
「もちろん、人々は戦争を欲してはいない。」ゲーリングは肩をすくめた。「戦争で得られる最良のものといえば、無事に無傷で自分の畑に戻ってくることが出来ることだというのに、どうして畑にいる貧しい
のろまが自分の命を戦争で危険に晒そうするだろうか。当然、普通の人々は戦争を欲しない。ロシア人であろうと、イギリス人であろうと、アメリカ人であろうと、これについてはドイツ人であってもそうだ。そんなことはわかっている。しかし、結局、政策を決定し、常に単純に、人々をそれに巻き込んでいくのは、国の指導者達なのだ。たとえそれが民主主義であろうと、ファシスト的独裁制であろうと、議会制で
あろうと、共産主義的独裁制であっても、そうなのだ。」
(続く)