「問題になっている農業集落調査とは、どういったものなのか。農水省は全農林業者を対象に、5年に1度「農林業センサス」という調査を実施している。農業集落調査はその一部だ。対象は全国に約15万ある集落のうち約14万集落。1955年の調査開始以降、農地や用排水路、ため池といった地域資源の保全活動の実態調査に加え、各集落で開かれた「寄り合い」の頻度やその議題までをつぶさに調べてきた。
署名呼びかけ人の一人、戸石七生・東京大大学院准教授(日本村落史・環境史)は「農業集落調査はコミュニティーに関する情報を提供する国の唯一の統計。総務省や国土交通省の過疎地域対策や内閣府の防災対策にも活用されている」と指摘。廃止されれば国や地方自治体の政策立案にも影響が出るとしている。
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農水省「調査実施、困難」
農水省が示した新たな調査票案を手に「話にならない」と憤る戸石七生・東京大大学院准教授=東京都千代田区の農林水産省内で2022年11月9日午後5時49分、町野幸撮影
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松沢裕作・慶応義塾大教授(日本社会史)は調査廃止や代替案は「農水省が農村を見捨てる姿勢の表れに思える」と指摘。