俺は幼少期からかなりの精神的虐待を受けていた。
もとは父親が暴力を振るっていたらしいのだが、俺は覚えていない。俺が覚えているのは、とにかく口ひどく夫をののしる母親と、じっと耐える父親の姿。
母親はあきらかに鬱病になっていて(当時80年代は「自立神経失調症」くらいの言い方だった)、幼児の俺は毎晩母親に抱かれて「明日の朝なんか来なければ良いねえ、ずっと夜ならいいねえ」という呪文を聞かされて育った。
しょっちゅう近所の貧しい家に預けられていたが、それなのに母親は「あそこは借家だから。貧乏人の子沢山だから」とその家のことをバカにしていた。