ヤニス・ヴァルファキス『テクノ封建制』読了。元来、入門書として書かれ、訳もいいのでお勧めです。ただ、訳者でもない斎藤幸平が何故「緩い」解説を書いているのか謎ではある。
ヴァルファキスは、2008年のリーマン・ショックの「つけ」をギリシアの押し付けられ際、シリザ政権の財務省としてEU中央銀行、IMFとの交渉にあたった財務大臣でもある。
この時、ECB、EU委員会、IMFは「緊縮」の一方的押し付けでギリシア側の交渉に一切応じなかった。2008年以降、EUで特に「反緊縮」が争点になって来たのはこの時の経験が背景にある。
というのも、既にユーロ導入でギリシア、スペイン、イタリアなどの「つけ」を払わせられた国家は通貨発行権を喪失していたからだ。結果、米国・欧州の銀行の損失を「南欧」国家が支払わせられることとなった。つまりギリシア人はEU帝国臣民ではあっても、通貨主権、完全に財政主権からは排除されている。
ヴァルファキスの「封建制」という概念にもその経験が反映しているのだろう。
本書ではGAFAMなどの巨大テック企業にユーザーが「クラウド農奴」として如何に奉仕しているか、わかりやすく解説されている。またクラウド・プロレタリアートとはアマゾンやウーバーの労働者たちのこと。(続く)