ゾーン・オブ・デス(英語: Zone of Death)、または死のゾーンとは、イエローストーン国立公園の南西部にある南北に長い地域であり、行政区画上はアイダホ州に属する。アメリカ合衆国憲法修正第6条の不備により、この50平方マイル (129.50 km2) の地域で発生した殺人を含む重大な刑事犯罪は理論上、裁判所で裁くことができない。
原因
イエローストーン国立公園は大部分がワイオミング州内にあるが、ごくわずかの部分は州境を越えてアイダホ州とモンタナ州に属する。うちモンタナ州の部分には住民がいるが、アイダホ州の部分は完全な無人地域である。一方、米国の連邦地方裁判所の管轄地域は本来州境を越えず、ある州の全域または一部を管轄するように設定されるが、イエローストーン国立公園の全域はワイオミング州の州都・シャイアンにあるワイオミング地区連邦地方裁判所の管轄地域に指定される。これにより、ワイオミング地区連邦地方裁判所は米国で、複数の州を管轄する唯一の連邦地方裁判所となっている。一方、国立公園の管轄範囲内における専属的管轄権はアメリカ合衆国連邦政府にあるため、国立公園内で発生したあらゆる犯罪は所在する州の州法の下で訴追することはできない。
アメリカ合衆国憲法修正第6条「刑事陪審裁判の保障、被告人の権利」は以下のような内容である。
このため、イエローストーン国立公園のアイダホ州に属する地域で発生した犯罪を告訴する場合、アイダホ州内で行われる裁判にこの細長い地域の住民から選任された陪審員が出席する必要がある。しかし、この地域は無人地域で、ボイシにあるアイダホ地区連邦地方裁判所の管轄地域外にあるため、アイダホ州内から陪審を選任することはできない…