異常震域(いじょうしんいき、英語: zone of abnormal seismic intensityまたは英語: zone of anomalous seismic intensity)は、通常ならば震源地(震央)で最も大きくなり、中心から同心円状に広がりながら小さくなるはずの地震で観測される震度(あるいは加速度)が、通常とは異なる傾向を示す現象、また、そうした震度分布がみられた地域のことである。
解説
震源地より遠く離れた所で異常に震度が高くなる現象である。かつて地中に地震が伝わる特別な抜け道があると考えられ、地震みち(じしんみち)と呼ばれていた。1920年代には異常震域という用語が用いられるようになった。
異常震域が現れる原因は、
その周辺地域の地盤の状態が異なるため(軟弱な地盤と地震波の反射、回折など)
上部マントルの地震波速度構造の違いで、減衰度合いが経路上の構造によって異なるため(構造線やプレート境界、マントルをまたぐなど)によるものの2つに分けられる。前者と比較して後者のほうが広い範囲で大きな震度が観測され、地震学の用語としては、異常震域は後者を指すことが多い。後者の例として、太平洋プレート中で発生した2007年7月16日の京都沖日本海の深発地震では、京都や、プレート境界をまたいだ中京関西地方や中部地方での揺れは小さかった一方、距離的には遠い北海道で大きな揺れを観測した。
着達する地震振幅は距離に反比例して、また着達までの時間には指数関数的に小さくなる。地下のマグマ中を進む地震波の速度は非常に遅く、このため火山地下のマグマ溜まりをまたぐ震源では減衰して地震動が小さくなるということも起こりうる。
逆に、オホーツク海での深発地震や十勝沖から千島列島沖の太平洋プレート中で発生する地震では、北海道・東北地方の日本海側や新潟県より北海道・東北地方の太平洋側、関東地方で大きな揺れを観測する場合もある。東北地方の日本海側や新潟県での揺れが小さくなる理由は、東北地方の中央部に南北に連なる火山が影響しており、地下のマグマ溜まりにより地震波が減衰しているためと考えられている。
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