田中拓道『福祉国家の基礎理論 グローバル化時代の国家のゆくえ』(2023年、岩波書店)によれば、1990年代以降の各国の亀裂構造とは下記3つによって構成される。
①社会的投資国家:社会政策の役割=人的資本への「投資」と見なす。育児ケア、教育、職業教育などの「積極的」な政策の推進、しかし目的は個人の再商品化。大企業経営・専門職、技術者が支持。
②排外主義ポピュリズム:①への反動。教育水準や技能の乏しい伝統的産業セクターの労働者層、小規模企業主・自営業者を中心に「エリート支配」を拒絶する運動が出現
③第三の選択肢:①、②の運動の矛盾に対応する、社会文化専門職を中心とする「左派リベラル」と、新しい社会的リスクにさらされやすい若者、女性、移民、不安定労働者層に担われる運動。既存のグローバル資本主義、グローバル・ガバナンスを所与とせず、それら自体の変革を求める