韓国の文在寅(ムン・ジェイン)前大統領は17日公開した回顧録で、安倍晋三元首相とのやりとりを明かした。北朝鮮との非核化交渉で安倍氏が廃棄対象に短距離弾道ミサイルや生物化学兵器を含めるよう要求し「足を引っ張る主張を続けた」と記述した。
文氏は米朝交渉で朝鮮戦争の終戦宣言の阻止に動いた当時のボルトン米大統領補佐官(国家安全保障担当)について「事実上、安倍首相の主張をそのまま代弁した」と記した。「日本は南北が統一の道に進むより、紛争が続く現状維持を望むこともあると認識しないといけない」と強調した。
文氏によると、北朝鮮の軍事活動が活発だった2017年の日米韓首脳会談では安倍氏が「韓国の海域で日米韓共同訓練をしよう」と主張した。文氏は緊張を過度に高めると考え「朝鮮半島領域の訓練は容認できない」と反対した。
3カ国会談で安倍氏は「韓国にいる日本人を日本に撤収させる訓練をしたい」とも提案したという。文氏は「明日戦争が起こるかもしれないという危機感をむしろ高める」と反発した。「そのときは本当に断固として言わざるを得なかった」と振り返った。
日本政府が19年に韓国向け輸出管理の厳格化措置を取った際は、日本の措置に関する情報を事前に入手していたと明らかにした。10年に日中関係が悪化した際に中国がレアアース(希土類)の対日輸出を禁止する措置を取ったのと同じ方法で、韓国に報復するという「噂があった」という。
18年12月に日本が半導体素材の3品目を特定して輸出禁止を検討しているとの情報を中国駐在の大使から聞き、代替輸入先を検討した。「企業に情報を伝えて万一の事態に備えるようにした。おかげで内部的には落ち着いた対応ができた」と振り返った。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM17BA00X10C24A5000000/