『こうしてイギリスから熊がいなくなりました』読了。
熊にまつわる不思議な短編集。この作品の熊は賢く、強く、人とは分かり合えず、獣の臭いが漂ってきそうな存在だ。サーカスや「熊いじめ」なる残酷なショー(実際に行われていた)に囚われる熊がいれば、恐らく虐げられた人を熊になぞらえたような不思議な熊もいて、いずれにしても酷い目にあった熊たちはイギリスから去る。イギリスの熊が絶滅しているというのも実際のことだ。
少しダークな雰囲気の挿絵も相まって、可笑しいような悲しいような奇妙なバランスがなんとも居心地が悪かったが、読み進めるうちに「これは熊への贖罪だ」ということが分かってきて結構泣いてしまった。特に最後の二章の静かな美しさが印象的。