曳光弾(えいこうだん、英: Tracer ammunition)は、発光体を内蔵した特殊な弾丸。射撃後、飛んでいく間に発光することで軌跡がわかるようになっている。トレーサーや曳痕弾(えいこんだん)とも言う。
射手に弾道を示し、軌跡を知ることで射撃中に方向を修正することができるため、対空射撃、または航空機からの射撃で各種の合図のために使用される。欠点は発射元の位置も推測されてしまうことと、弾道が普通弾と異なることである。
第一次世界大戦(1914年-1918年)から使われたとされている。
構造
曳光弾は、白リン、マグネシウムなどの発火性物質を内蔵しており、弾丸の継続した発光により弾道が線を描くように見えるため、射手はこれを目印に射撃を行うことができる。白リン弾とは明確に異なる。
通常弾の末尾方向から大きくくり抜き、そこへ発光体を詰め込む形となる。
通常弾との相違点
通常弾と曳光弾の重さと弾道(空気力学上の運動)の違いから、曳光弾は通常弾よりも集弾密度が広く、弾道も上側を飛翔する。特に長距離射撃においては、通常弾と曳光弾の運動は決定的に異なる。曳光弾は飛翔時間の経過によって、重心位置が変化するため、弾道低落が終末部分で極端に降下する。着弾した場合の飛散状況も、質量の軽い曳光弾は広範囲に飛散する傾向にある。曳光弾が内蔵している発光体が燃焼して気化するため、時間と共に質量が減少する。設計の改良により、幾分かは解消されたものの、現在製造されている曳光弾にもこの問題は未だに存在する。
発光体
使用色
曳光弾の発光体は、花火や照明弾に使われるものに近い。通常弾の末尾方向から大きくくり抜き、そこへ発光体を詰め込む形となる。アメリカ陸軍やNATO軍の標準規格では、ストロンチウム塩類と金属燃料(マグネシウム過塩素酸塩の混合物)であり、これは明るい赤となる…