ひろゆきに代表される「冷笑的現実主義者」は、理想が現世で実現されないから「お花畑の綺麗ごと」と嘲笑することで、達成できなくても少しでも近づくために努力するという人間の生きる意味自体を、無意味化してしまいます。こうして何の努力もしない自分を「現実的」と誇ることこそ、現代の宿痾です。
理想が実現した世はユートピアであって、決して地上に現出することはないかもしれないけれど、少しでもそれに近づこうとする努力こそ大事なのです。それを最初から諦めては、生きる意味もなくなります。積読本だった、なだいなだ『権威と権力』を読んでつくづくそう感じます。