時間がかかりつつ大竹弘二『公開制の根源』を面白く読んでいるが、20世紀初め頃からのスパイ小説の隆盛から、スパイという存在を考える章の中でアレントを引きつつ「植民地行政官たちにとっては、立憲国家や法律は『余計な障害』でしかなく、状況依存的な政令こそが何よりも優れた支配手段である」ということが書かれていて、官僚に不可欠の筈の文書主義をもほとんど蔑ろにし、法の支配より行政による政令が大事にされているように見える昨今の状況を眺めるに、満州の植民地官僚だった岸信介のことなど考え合わせれば、この国の官僚にはいまだ植民地官僚の精神が生きているのではないかと思った。