動画映画好悪論
會川昇脚本家
この文章を書くにあたり敢えて作品を再見することはなかったが、ロードショー当時の自分が「ホッ」としたことは鮮やかに記憶している。ラストに至り、あれだけ殺伐とした物語のなかで、なんと無数の無名の人々の善意が自己犠牲という形になって地球が救われる。そこを見て失笑した人もいるかも知れないし、安易なハッピーエンドととる人もあったろう。しかし私は「ホッ」としたのだ。あまつさえちょっとだけ、涙も流した。
私をホッとさせた要素はなんだったろう。
「二度とニュータイプの素晴らしさなんて語られることはないんだろうか」と。そこに『逆襲のシャア』である。挫折するニュータイプ少女、金で動く未来の見えない政治、先走る革命の矛盾などお得意の「自滅」を綴りながら、しかしあの映画は最期にはそれでも人間を救って見せた。彷徨の果てにそれでも監督は人間を「救う」。結果、旧「ガンダム』に影響を受けた世代である私は、「ああ、あのとき(旧『ガンダム』の頃) 考えたもろもろのことを自分はいまでも信じていていいのだな」と思った。