『ポリアモリー 複数の愛を生きる』https://amzn.asia/d/euR3F9N
ポリアモリーと浮気や不倫をどう区別するのか?については、パートナーに他のパートナーとの付き合いを明かすかどうか=誠実さで決定的に違うというのが著者のスタンス。一時的性的関係だけを目的にしたスワッピングとは、ある種の持続性や安定性への志向があるかどうかで区別されている。ちなみに著者は不倫もスワッピングもそれ自体が劣っているとかダメだとかは言ってない。他人の親密な関係性にジャッジを入れること自体を拒否している。
またポリアモリーには「愛は減らない」(2人愛したからといって1人への愛情が1/2になるわけではない)という考え方がある。だが、人間にとって時間や「脳内メモリ」や演算能力には限界がある。このあたりどうしているんだろうと疑問だったが、実際ポリアモリーの人たちの間でも、誕生日やクリスマスなど「どちらと祝うか」でストレスになったりもするらしい。
嫉妬についてもそう。「しないの?」と思ったがなんとポリアモリーの団体が実施した調査では8割のポリアモリストが嫉妬を経験。ここもなんとなく「複数人とつきあっても一切嫉妬しないのがポリアモリー」「ポリアモリーは生得的」となんとなく思っていたので、意外に感じた。っていうか、この本では「嫉妬」にまるまる1章割いてる。
こうやって書いていくと「ポリアモリー矛盾だらけじゃないか」「無理をしているじゃないか」と思われるかもしれないが、逆に考えてみてほしい。少なくない人類が「好きになってはいけない人を好きになって」しまったり、同時に二人を好きになって苦しんだりしているし、浮気や不倫をしている人なんかたくさんいる。そういう人間性を無理に抑圧しているのがモノガミー社会なのだから、矛盾しているのはそっちのほうだろう、とも言える。ポリアモリストはそうした矛盾に誠実に向き合い、嫉妬や時間的制約などの問題を解決するために努力していて、そこに成功している人も少なくない(失敗している人も少なくない)のだから、その点でポリアモリーだけが矛盾だと言われるのはおかしい。
白人層にポリアモリーが偏る傾向にある、などの知見も提示されてるが、これはどうなんだろう。アメリカに取材にいったので、アメリカのバイアスがかかっているからなのか、ポリアモリー=アメリカ発祥なので、そもそも事象として最初から偏っているのは当然なのか。こんなところは少し気になるが大方知りたいことは知れる概説書だとの印象を持った。