ひとに仕事を教えていると、どんな簡単なことであれ「自分にはできない」と思い込んでいると本当にできないというか、作業の手順を学習することを無意識に拒絶してしまうものだというのがよくわかる。
思慮深く自身の能力を低めに見積もるまじめな人よりも、根拠のない自信でなんでもやってみちゃう軽薄な人のほうがじっさいに仕事が「できて」しまう。
「できる/できない」という個々の能力差というのはそんなになくて、「やる/やれない」という自己への信頼だとか「やれる」という思い込みの量の差のほうが重要な気がするのだが、ここで気をつけなきゃいけないのは、問題が「やる/やれない」にあるとしても、個々人のやる気の問題として責任を個人にだけ求めるのは悪手だということだ。「やらない」のでなく、「やれない」と書いたのは、そもそも人が「自分はやれる」という屈託なく思い込めるかどうかは、本人の力ではどうしようもない、環境や運によって決まるものだからだ。