主人公の女性の容姿について微に入り細を穿つような描写に嫌気がさす。しかし、大岡昇平の見る目はそこにとどまらない。大岡は男の登場人物の嫌らしい人間性をもっと事細かに書き出している。
同性が見て嫌な男というより、誰が見ても嫌な人物をメンズクラブで庇ってきた現状と比較すると大岡の容赦のなさが堪える。
女性の自立ができない社会では毎日が不幸だし結末も不幸。就くことができる仕事も限られており、この時代は今より厳しかった戦後すぐであるのでなおさら、一人で食える仕事で達成感と幸福を追求できないと社会とのつながりなんてできやしない。
戦後すぐを舞台にした作品なのに、今と変わらないものも映し出していて読んでよかった。
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