小春日に吾子の睫毛の影頬に 『皿』 第一句集『皿』(一九四一年刊)は、所謂「吾子俳句」 のテーマ詠から始まる。〈みどり児に見せつつ薔薇の垣を過ぐ〉〈汗ばみし手のひらの音畳這ふ〉〈昼寐より頬冴 えざえと紅く覚めぬ〉〈朝餉待つ胡坐に吾子とぬくみ育 てつ〉〈オーバーに出際に抱きし吾子の毳〉〈着物焙る間を父われの臥処(ふしど)にあり〉など秀句が揃う。掲句では、柔らかな子どもの肌に細やかで濃い睫毛の影が差している のが美しい。潤いのある愛情をわずかに感じさせる描き 方でありながら、不思議な生き物との不思議な出会いに おける往還をテーマ化しており、新鮮な読み味である。「子 四七句」。
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