宮城谷昌光『香乱記』、第一巻読了。
舞台は中華統一後の秦朝。苛烈な法治主義ゆえにかえって世は乱れ、という時代。秦に滅ぼされた斉の王族に連なる田横という人物が主人公。いわゆる楚漢戦争モノだが、項羽でも劉邦でもない別の人物の視点から描くというのが新鮮で興味を持った。一巻最後では、秦の太子・扶蘇の客となり、蒙恬なんかも出てきてなかなかおもろい。この二人は始皇帝が死んだ後の偽勅で自害させられるだけで、人の絡みの中で描かれることあんまないからね。
で、面白いことは面白いのだが、描かれる女性が単純で、基本的に「貞淑妻」タイプか「利発才女」タイプのどちらか。物語を転がす「仕掛け」にはなっても、主体的に何かする人物としてはどうしてもペラい。漫画みたいに開き直って女傑や女軍師出せばいいかという話でもないし、歴史物は仕方ないのかね、こういうの。十二国記の女子高生の方が魅力的。ま、どうでもいいと言えばどうでもいいが。