私個人としては、袴田さんの事件からの教訓として、自白偏重などの操作や取り調べの問題点とともに、冤罪の場合取り返しがつかない死刑という制度(今回は執行されなかったけれど、袴田さんの精神を破壊してしまった)についても、見直しの議論がなされることを望みます。
死刑制度は冤罪の問題もあるし、悪用されると国家権力が人を抹殺するのに使えてしまいます。そして取り返しがつかない。うろ覚えですが、イギリスの死刑廃止は冤罪事件がきっかけだったと思います。権力も人間である以上万能ではありません。権力に過剰な裁量を持たせるべきではありません。
そして死刑制度のもう一つの問題点は、「悪い奴」が殺されて世の中が良くなった、俺は正しい側にいる、と社会の問題について過度に単純化された自己正当化をもたらしてしまうことです。この点について私は、K・B・レーダー『死刑物語』で蒙を啓かれました。