知識というものは、互いに独立した知識が頭の中に一つずつ積み重なってだんだん増えていく、というようなものではない。知識は、他の知識と結びつき、その関係性のネットワークの中で初めて意味を持つ。
この点を素朴なレベルで考えるとしたら、知識というより、情報とかデータとか言った方がわかりやすいかもしれない。「110」という数列からなる情報は「警察に緊急連絡する際に使う電話番号」という情報とセットになって初めて意味を持つ。
個別の無意味な情報が有意味になるには、いくつかの情報を束にする必要がある。これをとりあえず知識と呼ぶことにする。さらに、知識と知識が結びつき、なんらかの認識をもたらす。そのようにして、私たちは自分の精神の中に知識のネットワークを作っていく。
知識がこのようなものだとすると、新たな知識を獲得する時、その知識がその人にもたらす新たな認識は、あらかじめその人が持っていた知識の量に依存することになる。単純に言えば、より多くの知識を持つ人は、新たな知識からより多くの気づきを得て、より多くの便益を得る。別様に言えば、知識の獲得という活動は、投入労力に対して収穫が逓増する性質を持つ。