大阪大学大学院医学系研究科感染症・免疫学講座 ウイルス学の木村志保子特任助教(常勤)、上田啓次教授らの研究グループは、これまで未解明であった、インフルエンザ脳症の発症のメカニズムを解明しました。インフルエンザウイルスが脳血管内皮細胞へ直接感染すること、そして感染の結果産生されたウイルス蛋白の蓄積がインフルエンザ脳症の発症の原因になることを明らかにしました。
インフルエンザ脳症患者さんの脳では ウイルスがほとんど検出されなかったため、インフルエンザ脳症は、ウイルスの直接感染ではなくサイトカインなど感染される宿主側の要因によると考えられてきました。しかし今回、インフルエンザ脳症のモデル動物を新たに確立し解析を進めたところ、脳のウイルス感染自体がインフルエンザ関連脳症の原因になることが明らかになりました。インフルエンザウイルスは、脳に感染しても必ず増殖するわけではありません。しかし、感染すると、ウイルス由来の蛋白が産生されます。このたんぱく質がインフルエンザ脳症の原因となっていました。実際に、亡くなられた脳症患者さんの脳を調べると、動物モデルと同様にウイルス蛋白を検出しました。
研究グループはさらに、このウイルス蛋白の蓄積を抑制することができれば、脳症の発症を抑制し脳浮腫の進行を抑えることができるのではないかと仮定しました。この仮定に基づいてさらに研究を進めたところ、動物モデルにおいて、実際に発症を抑制できることがわかりました。
本研究成果は、英国科学誌「Acta Neuropathologica」(オンライン)に、4月30日(火)(日本時間)に公開されました。