サラ・S・リチャードソンの『性そのもの』(法政大学出版、渡部麻衣子訳)を読みました。X染色体とY染色体がどのように見つかったのか、それがいかにして「性そのもの」をかたちづくるものと見なされるようになったのか、社会におけるジェンダー観がそうした見方やそれに基づく研究にどのように影響し、そしてそれがどんな歪みをもたらしてきたのかといったことを論じるフェミニズム科学史の本。
https://www.h-up.com/books/isbn978-4-588-01084-2.html
私もすっかり「Yが出生時に男性として分類される典型的な身体を作り出すもの」みたいに思い込んでいたから、そもそもXとYをそんな分類に対応すると考えるのが根拠のない読み込みで、実際にはむしろX染色体側にそうした身体を作り上げるものの大半があるとか、そういう話にもびっくりしました。
前に読んだ『オスとは何で、メスとは何か』が性の生物学的研究の現状を整理して解説するような本であったのに対し、これはそうした研究の歴史的流れとそれを駆動してきた思考様式を炙り出すみたいな本でした。
トランス関連でXXがどう、Yがどうみたいな話をしたがるひともいるけれど、この本を読んでみてほしい(Yを攻撃性などと結びつけようとする過去の研究者たちの試みとその失敗の話とかもある)。